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データからデザインする教師の組織的な学び

14面記事

書評

中田 正弘・坂田 哲人・町支 大祐・脇本 健弘 編著
多くの学校、教員への調査を基に提言

 本書は、教師の組織的な学び、例えば、授業研究を中心とした校内研究等に焦点を当て、そのプロセスにおける促進要因や成果、課題の背景等を多くの学校、教師に質問紙調査等を行い、その定量的な分析とともに、詳細を捉えるためにインタビュー調査を通じた定性的な分析と考察が行われている。これは、EBPM(客観的な根拠を基にした教育施策の推進)が求められている教育現場に、実証的なデータをヒントに検討し、裏付ける仕組みを示しており、各学校の校内研究等の組織的な学びの構想に役立てることができる。
 第2章で、組織的な学びが効果的に循環するために、専門職としての教師が学習し合う共同体の在り方として、PLC(Professional Learning Community)というアメリカ発の概念を用いている。その中で「PLCが、教師の効力感によい影響をもたらす可能性は大きく、今後より追究していくべき概念であることが明確になった」と述べている。このPLCの概念と、「同僚性」の構築というこれまで日本の学校現場で重視され、大切に育まれている文化との違いがはっきりせず、評者のPLCへの学習動機につながった。
 今後、教育委員会はもとより、学校におけるデータ集積やその分析に基づいた検証および改善の必要性と組織的な学びのノウハウについて参考となる一冊である。
(2200円 学事出版)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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