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ファシリテーションとは何か コミュニケーション幻想を超えて

14面記事

書評

井上 義和・牧野 智和 編著
中野 民夫・中原 淳・中村 和彦・田村 哲樹・小針 誠・元濱 奈穂子 著
アクティブラーニングの功罪など論ず

 読み終えて、「コミュニケーション幻想を超えて」という本書の副題に行き着いた感がある。帯にもあるように、ファシリテーションがなにゆえに求められているのか、という経緯を考えないでファシリテーションのようなものを行っている。その現状を鋭く、そして平易に指摘し、読者に「何のため」という問いを何度もぶつけてくる。挑戦的で魅力的な内容がたっぷりと盛り込まれているので、どの項目から読んでも引き込まれる。
 特に第III部に出てくる「茶番劇化する授業とその問題」も面白いし、コラム3の中の「『アクティブラーニング』が理念であるがゆえの功罪」辺りから読まれると、本書の意図するすごさが感じられるだろう。
 構成は、8人の執筆者の下、III部8テーマ40の項目立てになっている。おのおのが現状をうのみにし、事なかれ主義になりがちな教育関係者の目を覚まそうという、強い意志を持って記述している。すなわちノウハウ本ではない。
 よく、「私たちは研究者なので…先生に授業者としての在り方を学ばなければなりません」といったことを言う人がいる。授業とは、伝える内容を持ち、吟味し、対象者にどのように伝えるかを工夫する時間である。そのような授業を目指す気概が本書には感じられる。秀書と評したい。
(2640円 ナカニシヤ出版)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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