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学校改革の理論 アメリカ教育学の追究

16面記事

書評

鈴木 悠太 著
改革研究の30年を丹念に分析

 本書は「一九八○年代から二○一○年代」を「絶え間ないアメリカの学校改革の時代」と表現した学校改革研究者、ニューヨーク大学のジョセフ・マクドナルドらの研究の足跡を丹念に分析し、「活動の理論」を主とする第I部「学校改革の『活動の理論』」から第II部「高校の学校改革研究」、そして「活動の理論」から発展した第III部「学校改革の『活動空間の理論』」で構成した。前著『教師の「専門家共同体」の形成と展開―アメリカ学校改革研究の系譜』(日本学校教育学会賞)同様、研究者の間で適切に評価される類いのものである。
 研究者でもない小欄がまず驚くのは大学の研究者が関与する学校改革の波の多さである。研究者による学校改革の試みよりも、“官製”の学校改革が目立つわが国との違いを感じる。教員など「学校改革者」と「学校改革研究者」との距離感について「改革の『坂道』を『共に転げ落ち』ながらも学校改革者の『省察』の実現を追求する」としている点に首肯する学校関係者も多いのではないか。
 「学校改革の記憶喪失は、アメリカの風土病である」と、著者は「序」の冒頭で、マクドナルドの言葉を引用する。「アメリカ」を「日本」に置き換えることも可能だろう。本書を読みながら、日本教育学が「学校改革」にどうコミットし、どう継承されたか・されなかったかをたどる「学校改革の理論」日本版が導出されないかと夢想する。
(4180円 勁草書房)
(矢)

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