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生のための授業 自信に満ちた子どもを育てるデンマーク最高の教師たち

16面記事

書評

マルクス・ベルンセン 著
清水 満 訳
詰め込みとは対極の北欧の教育

 世界の幸福度ランキング1位はフィンランド。そして著者が暮らすデンマークが2位。何と8位まで欧州が占める。ちなみに日本は、前回調査時より上昇して54位(2022年)。調査内容の詳細は割愛するが、この違いの要因は何だろう。簡単に比較できないが、本書を読み、考えさせられるのが教育の在り方だ。
 著者が新聞社の特派員として韓国に滞在していた時の経験が本書を著すきっかけとなる。いわゆる詰め込み主義的な教育に触れ、疑問を抱くことに。例えばデンマークの幼稚園では森や自然の中を歩き回り、自らの想像力を働かせて遊ぶことを大事にするという。子ども時代を満喫しているよう。
 では、デンマークの教師は何を大事にして生徒と向き合っているのか。本書では選ばれし10人の教師が授業を進めるに当たり大事にしていることを語る。「意欲を失った生徒への動機付けは?」「自信をどのようにつけさせるか」という課題に対しても多くの示唆を与えてくれる。彼らが語る内容には共通点があり、それを著者が「教師と児童生徒は人間的な関係をもつこと」「競争原理のなすがままに任せない」「教室は心地よく生きるコミュニティであるべき」など11点に整理。どれも感銘を受ける。
 不思議な題名に引かれ手にした本書だが、改めて教育とは何か根本的なことを考えさせられた。じっくり向き合いたい一冊。
(1980円 新評論)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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