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コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか 子ども・保護者・学校・教育行政に迫る

16面記事

書評

園山 大祐・辻野 けんま 編著
ベターな今後を考えるヒントに

 現在も進行するコロナ禍の「初期」において、さまざまな国の学校・教育行政がどのような対応を行ってきたのかを記録した一冊である。前半(第1部)は世界の各地域・学校での対応を点描し、後半(第2部)は各国の教育制度を前提に構造的な整理を試みている。
 今もってコロナ禍が進行中であることを考えれば、「速報版」の性質が強く、今後のコロナ禍がどう進むのか(どう収束するのか)、「コロナ後」に向けた社会情勢がどう変動するのかによっては、読まれ方も変わってこよう。より精緻な比較を可能にするような情報の整理と併せて、今後の続巻を期待したい。
 本書の提示する国・地域の情報は実に幅広く、それぞれ特有の課題を抱えながら試行錯誤を試みていることを読み取るだけでも十分刺激的だが、コロナ禍が各国・各地域の「これまでの課題」を顕在化させた、という読み方をすると、より興味深い。国と地方の政治・行政の関係性、地域間・民族間・階層間の公正・平等への関心や、それらを保障する制度整備や社会的インフラの状況、科学やエビデンスに基づく政策決定を尊重する価値観と体制、学校の自主的・自律的な判断と行動を支える諸制度、といった点について、コロナ禍は各社会の「弱点」を突いた。100点満点の対応が難しい中で、より「まし」な今後を考えるヒントを求めたい。
(3080円 東洋館出版社)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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