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インクルーシブな国語科教育入門

14面記事

書評

原田 大介 著
当事者の視点で授業の在り方追究

 全ての子どもたちにとって、楽しかった、参加して良かったと思える国語科の授業。教師であれば誰もが追究したいと願っているのではないだろうか。吃音で発達障害の当事者という背景を持つ国語科教育の研究者である著者が、授業参加および「全ての子どもにとって」とは何かを問い掛ける一冊。
 著者がインクルーシブな国語科教育という概念を打ち出した背景には、国語科教育の現状がエクスクルーシブ、つまり「多様な身体や生活背景のある子どもが参加できない授業が今日なお続けられていることにある」という。
 本書は、研究の経緯や思いを記した第1章に始まり、学術論文等を多数引用し、インクルーシブ教育について論の展開がある第2章、インクルーシブな国語科の授業研究、それを推進していくために必要な視座などの9章編成。どこから読み始めても分かりやすいよう構成されている。
 過去に授業に参加できなかった著者は、言語行為の多様性に気付いたことで生きることがずいぶん楽になったという。マジョリティーの立場にある子どもにとっても、「伝え合う力」を高める上で非言語を巡る学びは必須ではないか、マイノリティーを巻き込むことに固執すると新たな排除の構造を生まないか等、読み進める中で多くの課題に気付かされる。書名にある「入門」の意味をかみしめたい。
(1760円 明治図書出版)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室専門員)

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