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みんなの「今」を幸せにする学校 不確かな時代に確かな学びの場をつくる

12面記事

書評

遠藤 洋路 著
教育課題克服へ大胆な改革訴え

 「学校の仕事を増やし、教職員一人一人の仕事を減らすのだ。それがこの本で提示した学校の未来像である。社会のニーズがある以上、学校の仕事は増え続ける。文科省や財務省はそのことを素直に認めて、増える仕事に必要十分なだけの人と予算をつける方向に舵を切るべきだ」と熊本市教育長の著者は喝破している。得心しながら読み進めてきた評者は本著の最後のこのメッセージに、教育行政に携わる醍醐味を再認識し、新たな挑戦意欲が湧き上がってきた。
 「豊かな人生とよりよい社会を創造するために、自ら考え主体的に行動できる人を育む」という同市の教育理念の根底にあるウェルビーイングとエージェンシーとの整合性が分かりやすく説明され、それが子どもを学校づくりの当事者とする同市のさまざまな施策展開に生かされている。
 また、教育は本質的に子どもの「将来」の幸せのための営みである。子どもは子どもとして「今」を生きている現実から、「今」の幸せのためへとバランスシフトすることで、不登校、いじめ、体罰、校則、学校の窮屈さといった課題に対して、学校はこれまでの対応から変わることができると考え、実践に至っている。現在、どの自治体でも抱えている共通する課題に対して著者は、教職員の「意識」ではなく「仕組みと環境」を変えることが学校や行政の仕事であると語っている。
(1870円 発行・時事通信出版局、発売・時事通信社)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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