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ハンセン病問題から学び、伝える 差別のない社会をつくる人権学習

15面記事

書評

ハンセン病市民学会教育部会 編
コロナ禍の今こそ必要と説く

 コロナ禍で起きている人権課題について教師が予防的に対応することの重要性を、本書からリアルに感じ取ることができる。なぜなら人類が過去に得体の知れないものへの恐ろしさから、差別を行ってしまった経験があるからだ。
 日本ではかつて、ハンセン病患者や家族に対して非人道的な行為を国が先導して行った事実がある。「どうか、過酷な差別を生きてきた人たちがその経験から得た突き抜けるようなにんげんとしてのやさしさを、子どもたちに伝えてほしい」とハンセン病家族訴訟原告団長の林力さんは訴える。現在の教育現場は若手が増えてハンセン病の存在さえ知らない教員も少なくはない。
 医療検索サイト「メディカルノート」によると「ハンセン病とは、らい菌と呼ばれる細菌に感染することによって皮疹や末梢神経障害を引き起こす病気で、日本では年間数人程度しか新たな発症者はいない。しかし日本ではかつてハンセン病患者に対する強制隔離など人権侵害が横行しており、いまだに社会的な問題を抱える患者や家族も多いと考えられています」という。
 学び、考え、伝えるという視点では、人権教育の絶好のチャンスでもある。正しく恐れるという耳慣れた言葉も、こうした過去の経験から出た言葉とも思える。まずは、第3章の「ハンセン病問題からコロナ禍を問う」からお読みいただきたい。
(2530円 清水書院)
(大久保 俊輝・麗澤大学教職センター長)

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