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中高生のための哲学入門「大人」になる君へ

14面記事

書評

小川 仁志 著
思考・対話通じ自律した人に

 哲学とは「物事を疑い、様々な視点で捉え直して、再構成し、それを言語化する」ものであり、さまざまな思考をするための方法を学ぶことである、と著者は述べている。
 本著の対象は中高生であるが、その主張は日本の学校教育の現在、そして今後の在り方そのものに言及しているように思う。それは、教室で、社会で、「あなたの考えは?」と問われたら、臆することなく自分なりの思いを表現することのできる自律した人間を育てることの意義を訴えている。子どもたちの「なぜ?」を尊重し、思考・対話が繰り返される授業や教育活動の推進が求められる。そのためには、学校が先生と子ども、子ども同士が互いを対等な存在として認め合い、対話を通した「納得解」の形成や何でも語り合える集団づくりの経験を積む場になる必要がある。幸い、学校現場では、考え議論する「特別の教科道徳」や総合的な学習・探究の時間の充実が図られ、また多くの中学校・高校では、生徒会が中心となり教師や生徒同士との対話を通して校則の見直しや改廃を進めている。
 このような活動の積み重ねにより、さまざまな視点から自分なりの考えを持つ子どもが増えていくことが期待できる。
 本著は、思考や対話を通して「小さな哲学者」を育てていくことが、これからの学校教育の重要な使命であると示唆する一冊である。
(1760円 ミネルヴァ書房)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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