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学校と生活を接続する ドイツの改革教育的な授業の理論と実践

14面記事

書評

田中 怜 著
教育改革の変遷踏まえ理想の授業像探る

 学校での学びは実生活で役立っているか―。日本でも古くて新しい課題である。
 本書は、ドイツの「改革教育」の歩みを「学校と生活の接続」から照射し、「問題史的アプローチ」「教育方法学」の観点から分析した。両者の接続を実現させようと試みては挫折し、新たなチャレンジが始まる転変から、「可能性」や「期待」よりも「限界性」「困難性」に目を向け「限界や困難が生じる理由」を明らかにすることで、新たな地平を切り開こうと企てている点がユニークである。
 1970年代のオルタナティブ学校の創設と挫折、1980年代以降の「実践的学習」構想と実践、教育政策での「学校の開放」、それらの改革、授業批判としての「反省的学習」論、1990年代以降の学校実験「イエナ―プラン・ヴァイマール」と発展的要素を持つ「ヨーロッパ・プロジェクト」での「多視点的授業」などを取り上げる。学術書ではあるが、興味深く取っ付きやすい語りになっている。
 「『何を知っているか』(実定的学習)から『何ができるか』(方法的学習)への近年の授業像の転換では十分ではない。そこに、子どもが『何を(どう)見ているか』(反省的学習)という視点性の問題」を加えることの重要性を提案する著者は「反省的・多視点的授業の構成理論」に可能性を見いだしている。
 日本の実践者(教師)らは、この提起をどう受け止めるだろうか。
(4620円 春風社)
(矢)

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