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「学校施設・設備整備の課題に関する調査」まとめ

14面記事

施設特集

日本教育新聞社

 文科省が令和7年度末までの実施を目標にしている公立小・中学校等施設のバリアフリー化の取り組みについて、「車いす使用者用トイレ」の整備については整備完了が令和8年度以降になると回答した自治体が最も多かった―。日本教育新聞社が実施した「学校施設・設備整備の課題に関する調査」からは、そうしたことが分かった。本年度の調査結果を詳しく紹介する。

バリアフリー化に向けた整備&整備予定

 公立小・中学校等施設のバリアフリー化を推進するため、文科省は令和7年度末までに以下三つの目標を出している。

 ・車いす使用者用トイレ=避難所に指定されているすべての学校に整備する。
 ・スロープ等による段差解消=門から建物の前まで、昇降口・玄関等から教室等まで、いずれもすべての学校に整備する。
 ・エレベーター(1階建ての建物のみ保有する学校を含む)=要配慮児童・生徒等が在籍するすべての学校に整備する。

 このことについて、各自治体の整備状況や方針について聞いた。「エレベーター」については質問の解釈にばらつきが出る危険性があったため、今回は「車いす使用者用トイレ」と「スロープ等による段差解消」の二つについて集計結果を紹介する。
 「車いす使用者用トイレ」は、校舎と屋内運動場(体育館など)に分けて聞いた。校舎については「現在整備中だが整備完了は令和8年度以降になる」が107自治体(全体の25・8%)で最も多かった。
 「避難所に指定されているすべての学校に整備を終えた」が102自治体(同24・6%)で続き、「現在整備中で、令和7年度末までに整備を完了する」は35自治体(同8・4%)だった。「整備する予定はない」は65自治体(同15・7%)だった。
 屋内運動場については「現在整備中だが整備完了は令和8年度以降になる」が119自治体(同28・7%)で最多となる一方、「整備する予定はない」も105自治体(同25・3%)を占めた。
「避難所に指定されているすべての学校に整備を終えた」は43自治体(同10・4%)、「現在整備中で、令和7年度末までに整備を完了する」は21自治体(同5・1%)だった。
 「スロープ等による段差解消」は、門から建物の前までと昇降口・玄関等から教室等までの二つに分けて聞いた。昇降口・玄関等から教室等までについては「現在整備中だが整備完了は令和8年度以降になる」が103自治体(同24・8%)で最多となり、「整備する予定はない」が86自治体(同20・7%)で2番目に多かった。「すべての学校に整備を終えた」は72自治体(同17・3%)、「現在整備中で、令和7年度末までに整備を完了する」は38自治体(同9・2%)。
 門から建物の前までは「すべての学校に整備を終えた」が161自治体(同38・8%)で最も多く、「現在整備中だが整備完了は令和8年度以降になる」が70自治体(同16・9%)で続いた。



エコスクールの整備

 近年、脱炭素化への注目が高まっている。文科省などは環境を考慮した学校施設「エコスクール」の整備を推進している。今回、各自治体が管理する市区町村立学校を「エコスクール」として整備したことがあるかについて聞いた。
 「エコスクールとして整備した学校がある(今後、エコスクールとして学校施設を整備する予定がある場合も含む)」が162自治体で全体の39・0%となった一方、「エコスクールとして整備した学校がない(今後、エコスクールとして学校施設を整備する予定がない場合も含む)」が全体の57・8%となる240自治体で多数を占めた。
 「エコスクールとして整備した学校がある(今後、エコスクールとして学校施設を整備する予定がある場合も含む)」と回答した自治体には、エコスクールとしてどのような整備を行ったか(今後、行うか)について当てはまるものを22の選択肢の中から選んでもらった。
 最も多かったのが、「太陽光発電(屋上・屋根等に太陽電池を設置して発電した電力を活用する)」の135自治体だった。その他、30を超える自治体が選択したのは、「省エネルギー型設備」92自治体、「断熱化」75自治体、「地域材等の利用」59自治体、「自然採光」44自治体、「日除け」41自治体、「雨水利用」39自治体、「自然換気」34自治体、「建物緑化・屋外緑化」31自治体となった。


屋内運動場の整備と防災機能の強化

 管理する市町村立学校の屋内運動場について、整備が完了したこと、整備中のことを四つの選択肢から選んでもらった。
 「建物の耐震化」は362自治体で全体の87・2%となる一方、「非構造部材の耐震化」は204自治体(全体の49・2%)、「避難所対応設備の設置」は71自治体(同17・1%)、「冷暖房設備(エアコン)の設置」は53自治体(同12・8%)にとどまった。
 また、9割以上が避難所に指定されている市区町村立学校には防災機能の強化が求められている。避難所機能の整備ですでに取り組んだこと、今後取り組む予定のあることを13項目の中から選んでもらった。
 全体の10%を超えたのは「備蓄倉庫」(237自治体、全体57・1%)、「情報通信設備」(204自治体、同49・2%)、「自家発電」(119自治体、同28・7%)、「避難スペースへの空調(冷暖房)設備」(107自治体、同25・8%)、「マンホールトイレ」(98自治体、同23・6%)などとなった。


その他

 その他、学校施設整備について感じる課題などを自由に記入してもらった。
 その中では「整備の必要な項目が多く、費用の捻出が困難」(近畿地方・町)、「施設整備における対象面積や基準単価が少なく、実際の整備費と乖離しているため改善してもらいたい」(中国地方・町)など財政面の厳しさを挙げる自治体が今回も多かった。
 また、「学校施設の老朽化対策が必要であり、バリアフリー化や屋内運動場の空調整備まですぐに対応できない」(中部地方・町)、「学校施設の老朽化が進む中で、老朽化対策や建物に求められる機能・性能が年々多くなってきているが、地方自治体においては、財政的な理由により、これらの社会的ニーズへの施設整備が追いついていないのが現状である」(東海地方・市)など、老朽化対策の課題が多く挙げられた。

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