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特別支援学校寄宿舎のまどから 子どもの育ちを社会にひらく

16面記事

書評

小野川 文子 著
多様な人が支えることの大切さ

 特別支援学校は、全国で千校を超え、14万人以上の心身に障害のある子どもが学んでいる。幼稚部、小学部、中学部、高等部に在籍する子どもの障害は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱と多岐にわたる。学校教育法78条には、「特別支援学校には、寄宿舎を設けなければならない」とある。ところが、近頃は続々と寄宿舎が廃止され、その割合は全校数の約26%(2021年度)でしかない。
 本書は、30歳から23年にわたって寄宿舎指導員として勤めた著者が、寄宿舎における子どもたちの生活の様子や指導員による指導や援助の実際について紹介したものである。寄宿舎への入舎は、通学困難という理由だけでなく、教育的な目的もある。例えば、思春期・青年期を迎えた障害のある子どもにとって、親元を離れて友達と一緒に寄宿舎で過ごす時間と経験は、自立への一歩を踏み出す契機にもなり得るのだ。
 本書で紹介されている寄宿舎での子どもの発達の姿は、さまざまな人たちが障害のある子どものケアに力を合わせることの大切さを示している。さらに、「家族が障害のある子どもの面倒を見るのは当然」といった考え方の根本的な誤りを明らかにするものでもある。
 さまざまな困難を抱えて生きる障害のある子ども。その発達を支える寄宿舎の活動と役割について、多くの人に知ってほしいと願う。
(1650円 かもがわ出版)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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