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エピソード語りで見えてくるインクルーシブ教育の視点

16面記事

書評

インクルーシブ発想の教育シリーズ(4)
青山 新吾 著
学校現場に即し具体的に解説

 著者は小学校教員の経験を通級による指導の担当を主とし、教育相談や特別支援教育コーディネーターの経歴を持つ。学校現場を知っているからこそ具体的に分かりやすく書いているのが本書の特徴。一般化しつつあるインクルーシブ教育を解説し、「視点」の置きどころにより、日々の実践と重ねて日常の学校生活に落とし込んで記述しているため、現場教師に重なる場面が多く、これまでの対応の間違いや、辛うじて適切だったことを振り返ることができる。
 実践者である著者は、切実な多くの現場の問題に対応している。本書は7章構成で、その中でも4・5章の「『特別支援教育の視点を取り入れた教育活動』の充実がインクルーシブ教育を進める第一歩」(1)学級経営編と、(2)授業づくり編は、「視点」が明確で読みやすく、読後に取り組むべき方向性が見えるとともに明日にでも授業に活用したい内容になっている。
 どうしてここまで書けたのか、答えが巻末で分かる。共感した類いまれな協力者たちとのコラボである。豊富な視点や授業実践、教育センターなどの教育機関の協力支援体制があったこと、ならびに編集者によってかなりの試行錯誤を重ねながら仕上げられたことがくみ取れる。今回はここまでとして、さらに進めていくために姉妹編「つなぐ・つなげるインクルーシブ教育」もシリーズ化される。進展しないインクルーシブ教育の閉塞感を破る一書として期待したい。
(1980円 学事出版)
(大久保俊輝・麗澤大学教職センター長)

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