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心理学論文 解体新書 論文の読み方・まとめ方活用ガイド

12面記事

書評

近藤 龍彰・浅川 淳司 編著
自分なりに解釈、伝わるまとめへ

 心理学論文を読むとは、論文を読むこと自体を指すのではなく、論文に書かれている内容を自分なりに解釈して、他者に伝わるような形にしてまとめることである。これが本書で伝えようとしているメッセージだ。
 「第I部 理論編」では、タイトルの「解体新書」が示すように、心理学論文の構成や特徴について分析的に検討している。それは、人体の成り立ちを知るためにオランダ語の解剖学書を漢文に翻訳した杉田玄白や前野良沢の仕事に通じる。対象についての認識を深めるためには、それを徹底的に分析し尽くす作業が何よりも求められるのである。
 人体と比較すれば心理学論文の構造は単純とも言えるが、初学者にとっては手ごわい。心理学論文の構造(問題と目的、方法、結果、考察)と研究の四つの基本形(実験・調査・観察・面接)を押さえることが不可欠だ。
 「第II部 統計編」は、結果の読み取りに必須の心理統計をコンパクトに紹介している。
 「第III部 実践編」は、実験・調査・観察・面接の論文をまとめた実例を八つ取り上げている。どの論文も興味深く、まとめも的確だ。こうしたお手本をまねしながら、自分が読んだ論文をまとめていけば、論文を読むことが楽しくなっていくに違いない。
 「心理学論文はどうも苦手」という人は、本書を片手に読んでみるとよいだろう。
(2640円 ミネルヴァ書房)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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