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GIGAスクールのなかで教育の本質を問う 子ども主語の学びと現場主語の改革へ

13面記事

書評

石井 英真・河田 祥司 著
目指す授業像や教員研修など語る

 1人1台端末が実現して2年目。導入当初はさまざまな課題が浮き彫りになったが、現状はどうであろうか。
 本書は「1人1台端末で問われる教師の教育観と学習観」「ICTを活用した学びを加速させる条件整備とは」の2章構成で、著者二人の討論や、それぞれの小論が掲載されている。
 最初の章ではまず「どうすればICTの日常化を図れるか」、つまり教具から文具へ考え方を転換できるかを課題としている。そこから子どもが中心で、教師が伴走しながら創る授業への転換を述べている。特に「図工科や技術科で見られるような個人作業がたまに交わる感じや、あるいは、総合学習のように、大きなプロジェクト型の課題に協働で取り組むような自由度の高い展開」という授業像が分かりやすい。
 第2章では教育委員会の担当者として、導入に当たっての苦心が述べられる。特に1人1アカウントとその管理の重要性、教員の活用促進のための方策を述べている。中でも3年計画での「量から質」へのバージョンアップ策や教員研修の見直しで放課後30分のオンライン研修の実施などが興味深い。
 ほとんどの教師が小・中・高時代にICTを活用した授業を受けた経験がない。試行錯誤の状況はまだまだ続くが、これからの教育には必要不可欠だ。多くの教師や教育委員会関係者に読んでほしい一冊である。
(2200円 日本標準)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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