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近現代日本教員史研究

20面記事

書評

船寄 俊雄・近現代日本教員史研究会 編著
教師像と環境の変遷を概観

 全800ページに迫る大著である。公教育の成立期から現代に至るまで、特徴的な実践や著作を残した教師たちを時代に応じて紹介し、点描のようにしてわが国の「教師像」の変遷を大きなスケールで紹介している。
 もちろん、研究・実践を発信し記録を残した教師たちを取り上げているため、各時代における「典型的な教師」を追い掛けたものではない(技術的にそれは不可能であろう)。しかし、分厚い執筆陣がそれぞれの時代背景を解釈し、示唆的な活動記録の残る教師を、その取り上げる意義とともに紹介しているため、学校・教師を取り巻く環境と教職像の変化の概観に成功している。通史的に読み通すのはもちろん、気になる時期・実践をピックアップして読んでも得るものは大きいだろう。
 時代とともに学校を取り巻く環境は常に変化し、示唆的な実践者たちの記録からは、時代を超えて共通な(固定的な)教職観を見いだすのが難しい印象も受ける。一方、本書で取り上げられる実践には「個別最適な学び」「社会に開かれた教育課程」「地域とともにある学校」「学び続ける教師」といったキーワードに通じる要素も多分に見いだせる。現代風の(漂白された)スローガンのいわば「源流」たる先人たちの、泥臭く葛藤を伴う実践に触れ、本書のいう「知の足腰の強い教師」に向けた探究をしてはどうだろうか。
(4950円 風間書房)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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