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道徳的判断力を育む授業づくり 多面的・多角的な教材の読み方と発問

12面記事

書評

高宮 正貴・杉本 遼 著
思慮深さ育む理論と指導案12例

 本書が提案する「道徳的判断力」を育むための授業づくりは、「議論して考えを深める」あるいは「多面的・多角的に考える」といった道徳教育指導の課題に向き合い、解消するためのアプローチ法の一つである。
 「道徳的判断力」について「(1)価値理解(道徳的価値の意味、成立条件、理由、効用・目的についての理解)をもとに、(2)どんな対象について、だれに対して、どんな方法で、どんな時に、その価値理解をもとにした行為を実践すべきかを判断するための知性的な力(思慮深さ)」と定義する。
 その上で、道徳的判断力を育む学習の在り方、教材類型と六つの教材の読み方、中心的発問や追発問などによる「問題追求的な学習」の展開の仕方、「学習問題」の設定と発問づくりの手法などを解説する。
 これらの理論を小学校低学年から中学校までの教材12例、学習指導案に落とし込み、巻末資料にした。教材に表れた道徳的価値の対比などを意識しながら、一つの道徳的価値であっても多様な考えを引き出すための発問、学習問題、中心的な発問、追発問、予想される児童の意識、引き出したい価値観などで構成する「学習指導過程」は参考になるだろう。
 高宮氏の前著「価値観を広げる道徳授業づくり」に続く、今回の「授業づくり」は、小学校で道徳教育を実践するもう一人の著者を加え、より実践的なアイデアとして結実した。
(2420円 北大路書房)
(矢)

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