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学歴獲得の不平等 親子の進路選択と社会階層

16面記事

書評

豊永 耕平 著
「親ガチャ」の現実、多角的に分析

 以前、今後少子化で人手不足になるから、受験競争や就職も楽になるという意見を聞いたことがある。確かに大学受験はAO入試など複線化した。しかし依然として「学歴フィルター」が問題にされるなど学歴格差は変わらないようだ。
 従来の研究は子どもの学力や努力の階層差(1次効果)に注目してきたが、本書では進路選択の階層差(2次効果)に注目している。さらに「足も動かす教育と社会階層研究」として社会的調査の計量分析だけでなく、進路選択という個人のミクロレベルの行動プロセスを分析することにより学歴獲得の不平等を明らかにするものである。
 例えば親の学歴差に注目して分析し、大学進学への便益認知に階層差が生じていること、学歴間賃金格差への誤認や高等教育が大衆化しても、学力面での進学障壁は変わらないこと、銘柄大学から見た「ヨコの学歴」での親学歴差などを明らかにしている。
 一方で大卒家庭を大学進学に駆り立ててしまう圧力も問題視している。重要な方向性は、あらゆる層を大学進学に引き上げることではなく、仮に学力や学歴が低くても問題なく生活できる社会設計であると提言している。
 少し前「親ガチャ」という言葉が流行した。まさに本書が分析している通りの状況が続いている。生徒の進路を担う中学校や高校の教員には読んでほしい一冊である。
(5940円 勁草書房)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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