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一刀両断 実践者の視点から【第333回】

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行方不明の子どもたち

 本紙電子版(https://www.kyoiku-press.com/post-260307/)によると、行方不明として警察に届け出があった人数は令和2年を底に上昇傾向にあり、9歳以下、10歳代も同様だったことが警察庁のまとめで分かったという。令和4年に行方不明となった9歳以下は51人増の1061人、10歳代は1382人増の14959人だった。
 何だこれは。驚愕の人数ではないのか。小学校に入学をしてからなのか、それともそれ以前に行方不明なのか。それにしてもとんでもない人数ではないだろうか。
 特に9歳以下の人数が増加傾向にあるとはどう理解すればよいのだろうか、多様な理由があるしても考えにくい。仮に1061人の子供が事件事故に巻き込まれて最悪全員が死亡していたら、どう解釈すればよいのだろうか。
 社会の歪みは子供という一番の弱者に表出するものである。以前に入学予定なのに手続きに来ない家庭があった。何か事情があって違う学校へ行ったのかと推測していたが、出生届を出していないために戸籍上は存在していない子供がかなり存在している事を知った。
 あるデータでは一万人を超えていると伝えている。この数字が推定だとしても、とんでもない国になってはいないだろうか。こうした人命に関わる事を調査はしきれないと政治も行政も諦めているのが、現在の道義国日本なのである。その片鱗が学籍を担当すると見えてくるものである。
 以前、借金取りに暴力を受けて逃げ回っていた児童を担任した事がある。家のドアはボコボコで当の父親は逃げて母子が残されていた。警察に相談しても事件ではないのでと呆気なく扱われた。
 仕方なく即日遠方の親類宅へ引っ越すようにアドバイスをして、転校先は行方不明ですと明らかに暴力団まがいの借金取りに話して匿った事があった。こうした対応が正しいとは思わないが、誰一人として親身に関わろうとはしない冷徹さを今も忘れない。
 別れ際に、元気でな!と声掛けた時、目をキラキラさせて頷いたワタルの姿が今でも鮮明に浮かんでくる
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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