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教育DXは何をもたらすか 「個別最適化」社会のゆくえ

20面記事

書評

中西 新太郎・谷口 聡・世取山 洋介 著
福祉国家構想研究会 編
人材開発型教育への疑義唱える

 現在「教育DX」という言葉が飛び交っている。単なる教育のデジタル化ではなく、学校教育の変革をめざすものである。われわれは当たり前に受け入れつつあるが、大丈夫であろうか?
 わが国の教育政策は、「ゆとり教育批判」に見られたように、片方から片方へ振り子が振れることがよくある。生徒にクリティカル・シンキングを求めるなら、教育DXについても批判的思考が必要だ。
 本書の目的は「『個別最適化』手法に示される教育DXの新自由主義的特質を明らかにし、教育DXのめざす人材開発型教育構想に対抗する視点を追求する」となっている。
 第1章では教育DX構想の出現過程とそれぞれの政策展開を跡付けている。第2章では個別最適化を支える「データ駆動」の問題点とそれが新自由主義化した社会の要求する能力主義秩序の具体化に有効なこと、第3章では能力主義秩序に対し学習権を基本に据える教育構想を、第4章では人材開発型教育に対抗する生存権保障の教育を主張している。
 それ以外にも「一政府機関の掲げた未来社会像(Society5・0)は正しいのか」など教育行政以外の政策主体によって立案されたものへの疑義を記している。われわれも学校の当たり前を見直す動きと同様に、政策についても多様な視点から検討する必要があると思う。
(2200円 大月書店)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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