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ユネスコ・教育を再考する グローバル時代の参照軸

14面記事

書評

日本教師教育学会第10期国際研究交流部・百合田 真樹人・矢野 博之 編訳著
21世紀の学びの在り方を提言

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が21世紀の教育の目的と学びの姿を再考する専門家会合での議論の成果として2015年に公表したレポート『Rethinking Education』の翻訳に、特に重要な概念についての解説を加えて紹介するものである。
 これらへの理解は、教育や教育政策を巡る国際的な対話に参加するための必要条件といえよう。だが、従来の日本での教育や教育政策に関する言論は、こうした世界の動向と十分に連携できているとは言い難い。
 レポートは「持続可能な成長・鍵となる課題」「ヒューマニズムの再興」「複雑化する世界での教育政策の立案」「教育は共通善か?」の4章から成る。相互依存が進む世界において持続可能な開発を考えれば、教育と知識は世界的な共通善と見なすべきであるとする。
 解説編も多くのキーワードを取り上げており、例えば「エージェンシー」について文科省の解説では十分でないと指摘するなど、諸概念の理解を深める上で大いに参考になる。
 教育の力、学校教育の重要性、デジタル技術が教師の代わりにならないとの指摘、近年の国際的な論調が教育の結果として測定可能な知識やスキルを重視し、学びのプロセスを軽視する傾向があることへの警鐘など、首肯できる点が多い。より重要なのは、日本の教育と言説を相対化する視点だろう。
(2200円 学文社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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