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個別最適をつくる教室環境 多様な学びを創り出す「空間」リノベーション

16面記事

書評

野中 陽一・豊田 充崇 編著
既存の校舎を生かした提案も

 4間に5間の長方形の教室に長い廊下というのが日本の伝統的な校舎建築だ。昭和50年代後半にはオープンスペースを持つ壁のない教室がつくられ、個別化・個性化の考え方に基づく実践が行われたことがあったが、広く普及するには至らなかった。
 「教える」から「学ぶ」へという授業観の転換は、1人1台端末の整備によって加速が求められている。ところが端末を置く机の上は狭く、課題別グループ学習を展開するには今の教室空間では窮屈だ。
 本書では、個性化・個別化を前提とした英国の教室風景、中国におけるスマート教室の試みを紹介して、これからの学習環境について具体的なイメージを持ちやすいようにしている。
 そして、国内における先進的な事例を取り上げる。個の学びと協働的な学びを組み合わせ、子どもたち自身が学びの場を選択する光景を紹介。動きのある教室や図書メディアセンターを中心に据えた校舎、ICTをフル活用した教室環境など、新改築を考える関係者には参考になるだろう。
 一方、教室不足にあえぐ学校にとっては夢のような空間づくりの話だ。が、既存の校舎でも、校具を工夫するなどして「空間」のリノベーションができるという企業側からの提案もある。学校全体を学びの場にするという考えで校内を見直すと、可能なこともあるはずだ。発想を柔軟にしたい。
(2310円 明治図書出版)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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