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6つのプロセスで理解する 令和の学校マネジメント

16面記事

書評

日渡 円・葛西 耕介 編著
深い内省を基に自律的経営へ

 兵庫教育大学大学院の教育政策リーダーコースは、教育長向けの能力開発プログラムを提供し、多数の人材を育ててきた。このプログラムを学校管理職向けに再構築し、10年以上の蓄積を踏まえ、エッセンスをまとめたのが本書だ。同コースは編著者の一人、日渡円さん(6月に逝去)が立ち上げた。
 本書はマネジメントの流れについて「情報収集」「分析」「構想」「企画」「実行」「判断」の六つのプロセスで表現。各段階で読者に「自分の内なるものに向き合う」ことを迫る。分かりやすく言えば、自分の考え方の「クセ」や「偏り」を自覚すること。目指す方向性や改善の手だてが独善的になっていないかと絶えず確認し、内省しながらの経営を求めている。
 管理職になると、周囲から苦言を寄せられる機会が減り、自分の考えや判断は正しいという思考に陥りがちだ。だから、プログラムを体験すると、参加者は自分の中での正しさが揺さぶられ、戸惑いを覚えるという。プログラムの演習などを通してたどり着くべき場所は、学校の実態・実情を基に「最適解」を生み出せるようになること。他の参加者の思考や判断に学び、違いを実感し、「私はどうあるべきか」と考え、行動変容につなげることが目標だ。
 本書は従前の管理職研修のように、唯一絶対の解は書かれていない。過去の成功体験にとらわれず、自主・自律的に学校創りを進めたい全てのリーダー層に強くお薦めしたい。
(2750円 学事出版)
(巨)

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