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子ども・若者の居場所と貧困支援 学習支援・学校内カフェ・ユースワーク等での取組

16面記事

書評

横井 敏郎 編著
多様な実践通じ制度の課題も浮かぶ

 本書では生活困窮世帯の子どもの学習支援事業、高校内居場所カフェ、ユースワークといった、日々の学習と生活に困難を抱える子ども・若者を支える実践について、それぞれの取り組みの様子とその意義、さらに現在直面する課題などについて触れている。
 前半には学習支援についての論考が、後半には居場所カフェとユースワークについての論考が並ぶ。これらの実践が決して「学習支援」に集中したものではなく、その背景として幅広く若者の困難・生きづらさを捉え、そこにアクセスしようとしていることが分かる。当然ながら収益性のない事業であり、全ての実践が公的な補助等の下で展開されているが、困難や生きづらさを幅広く捉え、当事者の自発性を大切にしようとするほど、費用と効果を厳格に追求しようという関心への応答が難しい点など、実践の内容だけでなく、それを取り巻く制度・環境を理解する上でも示唆に富む内容となっている。
 各章で取り扱っている実践はそれぞれ別々のものであるため、気になる章から読み進めて、実践の幅広さを知るという読み方もできる。また第10章では欧州の先進事例から「ユースワーク」を論じているが、第9章までの内容と往還させて読むことで、それぞれの実践が重視していることの意義をより立体的に知ることもできる。
(2420円 学事出版)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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