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自立的で相互依存的な学習者を育てる コレクティブ・エフィカシー

15面記事

書評

ジョン・ハッティ/ダグラス・フィッシャー/ナンシー・フレイ/シャーリー・クラーク 著 原田 信之 訳者代表
「協働的学び」への示唆に富む

 「『他の人と一緒に行動することで、より多くを学ぶことができる』という生徒の信念を意味する」のが「コレクティブ・エフィカシー」。「集合的効力感」と呼ぶ。
 なぜ集合的効力感が必要なのか。米国での調査によると労働市場での雇用の増加は「集団で働く際に社会的スキルが要求される職業で起こっている」ためだ。「これまで評価されてきた知識に加え、チームプレイヤー、有能な伝達者、コミュニケーター、そして高い社会的感受性をもつ人材」が求められ「コレクティブ・エフィカシーのスキルを教えないならば、それは生徒を失業に追い込むことにつながるかもしれない」と明解である。
 「協働的学び」を取り込む、わが国の教育の在り方への示唆にも富んでいる。
 集団に貢献するための個人の自己効力感(セルフ・エフィカシー)を育む「『私』スキル」と「コレクティブ・エフィカシー」を醸成する「『私たち』スキル」を伸ばす必要性や、「コレクティブ・エフィカシー」を高める学習設計のポイント、「達成規準」はどうあるべきか、「ペア学習」や「グループ学習」の効果や取り組み方、「コレクティブ・エフィカシー」のアセスメントなどを全9章で解説する。
 集団そのものの学びと個の学びの評価の関係、授業での学習内容の「達成規準」だけでなく、学び方とその意義を教師と児童・生徒が共有する必要性など、参考になる。
(3080円 北大路書房)
(矢)

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