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日本語探究のすすめ 日本語学と国語教育の連携に向けて

16面記事

書評

日本語学会 編
中高生の優秀作品紹介、理論編も

 次世代の言語研究者を育成すべく、日本語学会は、日本語への関心を広く喚起したいという思いから「中高生日本語研究コンテスト」を企画した。本書は、昨年度までの2回のコンテストの上位入賞作品の紹介と解説を第1部に、第2部には学会の立場から、国語教育と日本語研究の関わりについて論じた理論編を収載している。中高生とその指導者、研究者を対象に、日本語学会創立80周年を記念して出版された貴重な文献である。
 第1部の中高生の優秀作品を読んで、その質の高さに私は瞠目、驚嘆の思いを抱いた。発表に至るまでの研究の手続きが精緻かつ合理的であり、指導に当たった先生方の的確な助言が、見事な実りを見せている。まさに「探究的な学び」が具現されていると感嘆した。
 まず、身近な事象の中から「問い」を生み出し、「先行研究」を丹念に調べ、未踏の課題を定め、自分なりの解明の「仮説」を立て、多くの事例の分析によって「検証」し、時に「仮説」を修正し、結論を導くという一連の研究手続きが明快に進められている。
 発表の形式に「プレゼンテーション動画」を採用したのは「現代のデジタル社会に即したスキルを磨いてほしい」からだともある。
 身近な日本語の在り方を探究する「次世代の言語研究者の育成」という学会の願いは、確実にその歩みを進めていると実感できた一書だ。
(1980円 大修館書店)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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