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生徒指導~小学校段階での考え方~【第2回】

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教科・指導

見えているものから見えないものを診る力

 埼玉県所沢市で中学校2年生が事件を起こした。私はこうした出来事を授業や研修会の導入で意図的に用いている。ねらいは人の不幸を他人事にしている自分に気が付かせる為である。立場を様々に提示し、その視点から事件を視ると、かなりの感覚で違う価値観に気が付く事になる。そこで足りない知識や経験を痛感させてから、その日の授業に入るのである。この手法はあらゆる研修でも用いている。
 しかし、安易にやるととんでもない事になる。評論家は発言に責任を問われないから、現場には来ない。ある著名評論家の言動を腹立たしく感じるのは、私だけではないだろう。しかしメディアの影響から市民の目線を変える力を持つから恐ろしい。
 さて、私には何点かのポイントがある。一つは、メディアの記事を鵜呑みにせず、書き手の意図を見破る必要がある。二つ目は、法的な知識や社会通念に照らして感情を極力入れない事である。三つ目は、短絡的に答えを求めない事である。
 自分の考えや疑問を自己に問いかけ、他の意見や考えに触れて、共感や違いを知る訓練が日頃からされていないと、慢心になり失言が多くなり、市民を惑わせ、怒らせ、恐怖心を煽り、いたずらに大衆をコントロールする危険がある。

 この事件の場合、以下の点が現時点でのポイントと私には思える。

 ・外見の仲の良さでの勝手な決めつけ
 ・蓄積の衝動か、突発的か、その背景は
 ・被害者写真の配信はメディアの自由か
 ・教師や管理職の受信機の鈍さ
 ・親や家庭を誰が支援してきたか
 ・包丁を使った事件の連鎖

 ある心理士が、20回つねられたから殺害に至る落差、幼稚性をも指摘していた。この指摘こそ現実を知らない評論と私には思えてならない。そこで、この事件が小学校時代の生徒(児童)指導が発揮されていたらと考えてみたい。こうした要因は小学校段階で作られる事が多いものである。すなわち力関係や親分子分という力関係による従属である。
 ならばそれらを想定して、どこでどのように考えさせ、論議し、学ばせ、学ぶのだろうか。規範の習得が極めてすなわち曖昧なのである。こうした事件が起きないと、まさかが想定できない傾向が私共にはある。事件事故を未然に防ぐ事は、常に最悪を想定する日々の訓練、すなわち生徒(児童)指導の感性を研ぎ澄ませておく必要がある。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~