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コロナ時代に考えたい学校問題【第86回】

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ドイツで舞台に立つ教え子

 有望な俳優に自殺が続いた。才能が失われたというファンの目線ではなく、家族だったらと考えてしまう。
 売れないで違う道へ行っていたら違う人生があったわけである。こうした華やかな世界に憧れて入るものの、孤独は倍加して行くように我が娘を見ていても思えてならない。
 観客が千人を越える舞台の主役を務めても、売り上げの多くを事務所が吸い上げる。俳優の生活は苦しくなる。生活が出来ないで、名前を変えてバイトをすることになる。
 俳優を目指そうと努力を重ねても、オーディションは厳しい。多くがふるい落とされる。運良く採用されても、その陰には数えきれないほどの仲間の涙がある。こうしたみそぎを経て舞台へ立つ仕事になっている。
 そうした俳優の精神は、作られた役の笑顔とは真逆に、ズタズタになっているように思える。有名になればなるほど、友や家族との距離は広がり、バランスを崩して行くように感じられる。

 俳優を手厚くサポートしている所属事務所は少ない。商品として扱う扱われる事が常態化しているのである。事務所を辞めると一年間は芸能界で仕事が出来ないという取り決めや慣行があるという。
 ドイツのブレーメンにある歌劇場でソリストとして働く教え子がいる。テノール歌手であるが公務員として保証され、家族を持ち、安定した基盤の中で生き生きと舞台に立っている。
 これでいいのか、日本!
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題