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教員養成の現場から【第8回】

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「やらされ」の研修では育たぬ

 令和元年11月1日、上越教育大学学校教育実践研究センターで「指標に基づく資質能力向上シンポジウム」が開催された。
 鳴門教育大学の前田洋一教授から「資質と能力はどう違うのか」という問いから基調講演が始まった。
 中教審での定義付けでは「資質は能力や態度、性質の総称」であり、広い概念とされている。
 基調講演後の分科会では「若手教員を育てるための取組」「教員育成指標の活用」「研修管理システム」などについて話し合いが持たれ、その中で研修管理システムを整え自主的な研修を促す取組が紹介された。

 千葉県総合教育センター=「研修履歴の自己管理」「学びの蓄積の表示」「eラーニング」「Web申込みによる研修支援」という機能を持つ研修履歴システム「Asttra(アストラ)」を構築し、令和2年度から本格的に運用する予定。

 東京都教職員研修センター=自己のキャリア形成を意識できるような「マイ・キャリア・ノート」という取組を行っている。教員が自らの研修履歴等を確認して研修計画を立案し、計画的に研修や自己啓発に取り組み、時代の変化や自らのキャリアステージで求められる資質・能力を、生涯にわたって高められることを目的としている。

 岡山県総合教育センター=本人が保管し定年まで使うA4判紙ベースの「キャリアデザインノート」を作成し、1年目から36年目までのキャリアパスをデザインして自己研修を進められるように工夫している。

 秋田県総合教育センター=教員育成指標の周知と活用を図るために「あきたキャリアアップシート」を開発し、自己評価と自己の研修計画を連動させている。また、研修履歴を自己管理するためのエクセルシートを用意し、活用させている。

 若手教員はいつまでも若手教員でいられない。大量採用時代教員の年齢構成がいびつなまま次の世代に移っていくことになるが、個々の教員が自己啓発によって資質・能力を高めていくことが重要である。
 「やらされ感」のある研修では若手は育たない。自分のキャリアパスを見通し、自発的な研修に取り組むことが決め手である。「働き方改革」によって研修の企画がしにくくなっているという。しかし、自らの意思による研修環境づくりが教育委員会や学校現場の課題である。「学び続ける教師」を失ってはいけない。

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