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私の戦争体験記 我が町にも戦争があった

14面記事

書評

椎名 仁 著
傘寿超えた教育者、平和への思い込め

 著者紹介から稿を起こしたい。巻末の経歴を見れば分かるが、県の教育研究界の第一人者であり、評者も敬愛してやまない方である。現役勇退後も教育研究の発展のために研究会を組織し、啓発されてこられた。その著者も傘寿を超え、失礼ながら最後のメッセージとして後進に訴えたいことをまとめられたのだろう。それが反戦・平和である。
 「我が町にも戦争があった」と題する通り、本書は著者の戦争体験記である。先の大戦時、著者は小学生、当時やったこと、見聞きしたことをありのままに伝えたいとの思いで筆を執られた。取り上げた素材は50に及ぶ。現在でも分かる素材、例えば遊び、運動会、水泳なども、読めば当時と様相が一変していることに気付こう。逆に、今では意味が分からない素材、例えば、供出、肥汲み、防空演習などは読んで初めて当時の大変さ・厳しさに気付く。
 構成にも工夫がある。囲みで素材についての説明・解説がある。次いで本文、赤裸々な描写、率直な思い、子どもの目で見たありのままの姿が描写される。まとめとして、著者の信念や読者への投げ掛けが述べられる。
 終章の「戦争とは」は心して読みたい。著者の満身の思いが伝わってくる。本書が、誰にでもある「我が町」を見つめ直す素材となれば、著者の思いもかなうことだろう。
(2420円 あけび書房)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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