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知のフィールドガイド 生命の根源を見つめる

14面記事

書評

東京大学教養学部 編
最前線の研究を高校・大学生に

 本書は、自然科学の最前線をいく研究について、高校生や大学生を主な読者として想定して紹介したものである。その内容は、タンパク質、幹細胞、原子時計、放射線、水、天体現象など多岐にわたっている。門外漢の評者には、知らないことが多かったが、同時に知的な好奇心を大いに刺激するものでもあった。光格子時計でスカイツリーの高さを測るという話や、並体接合の実験結果によれば妊娠して母体で胎児を育てる母親は若返りの可能性があるという話など、興味深いエピソードが多かった。
 自然界に起きているミクロな現象からマクロの現象に至るまで、そこには未解決の問題が数多く存在している。それを一つずつ解き明かし、未知だった現象を整合的に説明する理論を打ち立てる。それが研究活動の面白さであり、醍醐味である。同時に、研究を進めていくには、さまざまな困難や苦労も伴う。本書は、そうした研究活動の様子をリアルに伝えるものである。
 高校では、物理・化学・生物・地学という科目ごとに学習するが、本書に登場する研究は、物理学と生物学、化学と生物学、さらに、医学や環境科学なども含めて、学問の壁を越境し、協同・融合して進められている。そうした学問の発展を知ることで、若い読者の想像力と創造力は大いに発揮されることだろう。
(2420円 白水社)
(都筑 学・中央大学教授)

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