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奨学生への指導手引 授業料無償化政策以降の指導助言

14面記事

書評

湯田 拓史 著
事例検討、関連団体との連携も

 公教育の使命として「格差社会」「子どもの貧困」等への対応が注目される中で、本書は義務教育段階以降における経済的援助策等について論じている。
 第1章・第2章は教育費に関する基本的な政策を説明し、教育に公費を投じる社会的な意義を示す。続く第3章は、どういった場面でどのような教育費が発生するのかを整理する。義務教育以降は進路選択が多様となり、進学に伴う経済負担の実際や、負担を軽減する政策について、全体像の把握が難しくなる。近年の政策動向も含めて、そうした情報の「交通整理」が得られることは、現場で子どもの学びの保障に奔走する教員のみならず、さまざまな者にとって有益である。
 続く第4章以降は、支援の「実践論」といった内容になる。第4章では関連団体(NPO法人等)との連携事例が紹介され、支援イメージの幅を広げることができる。第5章のケース教材では、学校では進路選択にかかる経済的な課題がどのような形で出現するのか、筆者の経験等に即した具体性の高い「事例」として示され、それらの対処・解決に向けた勘所やヒントを学べる内容となっている。
 本書刊行による利益は全て、進学支援を行うNPO法人に寄付されるという。子どもたちの学びの保障について考えを深めつつ、支援の実践を応援してはどうだろうか。
(1000円 発行・鉱脈社)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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