日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

56歳の青春宣言 女性自衛官校長になる

16面記事

書評

竹本 三保 著
「詰め込み授業」脱却を重視

 著者は、海上自衛官を定年3カ月前に退職し、3カ月の研修を経て、女性初の民間人出身公立高校長(大阪府立狭山高校)に就任した。本書は56歳の青春宣言と題し、校長を務めた5年間の取り組みを4章にわたって具体的に記したエッセーである。
 第一章には、なぜ自衛官から民間人校長を目指したのか、なぜ大阪府を受験したのかなどの詳細が記されている。著者は、校長職は自衛官とは異文化であると捉え、「ゼロからの出発」と考えて職務をスタートした。この考え方が、一層良い学校経営や教育成果につながったのかもしれないと思う。
 第二章から第四章までは、姉妹校提携、狭山池まつりなど、「さやまグローカル」と称する国際交流、地域交流による生徒の育成をはじめ、「チームさやま」を掲げた著者の意欲あふれる実践が数多く紹介されている。「詰め込み授業からの脱却こそが喫緊の課題」と認識し、赴任1年目から授業観察評価シートやICTの活用などの授業改善を積極的に行った。赴任1年目から即行動したこと、授業を重視した判断力や先見性も素晴らしいと思う。生徒の伸び率(伸ばし率)ナンバーワンの学校を目指して、狭山高校は生徒の成長とともに進化し続けた。
 民間人あるいは女性であるということにかかわらず、一人の人間として、校長として、著者の指導力、経営力に心から敬服する。
(1836円 星湖舎)
(谷 智子・高知市教育委員会委員)

書評

連載