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青少年の性行動はどう変わってきたか 全国調査にみる40年間

17面記事

書評

林 雄亮 編著
「草食化」する若者、原因は

 1974(昭和49)年から始まった「青少年の性行動全国調査」は、ほぼ6年おきに実施され、8回目を数える。当初の調査実施主体は財団法人日本性教育協会。
 本書は、その40年間の調査で蓄積したデータを生かして、青少年の性行動の変化と特徴を分析していく。序章に全国調査の歴史を置き、第I部は性行動の実態とメカニズム、第II部は性に対する態度とその変容、第III部は性についてのリテラシーと性教育で構成し、全11章を配した。
 近年評される性にこだわりを持たない若者の「草食化」も取り上げる。性に関する情報源は従来「友人」が1位の座を占めていた。だが、インターネットの登場で主役の座が移っていくことで、友との性に関する会話、やりとりが減少し、消極化につながったと分析した(第7章性や恋愛に消極的な若者)。
 一方で、性感染症概念が性行動を抑制する働きをしていることを指摘し、性行動がリスクとして捉えられていくことが述べられる(第8章21世紀における親密性の変容)など、「草食化」現象が読み解かれていく。
 また、LGBTなど性の多様化に関しての青少年の意識にも踏み込んでおり、さらなる成果が待たれるところだ。この他、青少年の性被害、性教育の変遷なども取り上げられ、継続的な調査を強みに、さまざまな研究テーマにアプローチしている。
(7020円 ミネルヴァ書房)
(徳)

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