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学校を変えた校長講話

5面記事

書評

榊原 恒雄 著
当たり前のことができるリーダーに

 本書を開くと、ダイコンやジャガイモ、ネギなどを高らかと掲げる著者の写真が目に入る。著者は広島県の教育を先導し、教育改革を象徴する「リーディングスクール」として平成16年度に開校した同県立広島中・高校の2代目校長(現広島県教委理事)。20年度の赴任から9年間の校長講話と学校経営の骨子をまとめたのが本書だ。
 著者が校長として常に心掛けたのは、将来、真のエリートとして活躍できるように、高い志を持ち、豊かな感性を持った人物を育てること。ただ、生徒の年齢が幅広いことから、講話は誰にでも分かりやすく、身近に感じられ、いつまでも心に残る内容を目指した。そこで、登場するのが自分の畑で育てた数々の野菜。講話後に玄関に展示すると、生徒たちがうれしそうに話の内容を振り返る姿をよく見掛けたという。
 著者が繰り返し使い、合言葉になっていたのは「ABCDの法則」。A・当たり前のことを、B・馬鹿にしないで、C・ちゃんとする、それがD・できる人―という内容。どれだけ頭脳が優れていても、毎日コツコツ努力を重ね、美しいものを美しい、汚いものを汚いと感じ、困っている人を助けるといった行動ができる人になってほしいという願いを込めた。この法則を踏まえて、医学部への進学希望者に伝えた言葉は胸に突き刺さる。
 本書は、講話づくり・学校づくりのどちらにも参考になる内容があふれている。
 発行はトーク出版で定価は2500円(税別)。

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