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こどもホスピス 限りある小さな命が輝く場所

13面記事

書評

田川 尚登 著
短くとも家族と一緒に豊かに生きる

 終末期の緩和ケアをするところとして「ホスピス」は認知されているが、わが国では子どもを対象としたホスピスへの理解などは諸外国に比べ遅れているという。本書では「生命を脅かされた子どもと家族のための施設」として紹介されている。
 著者自身、重い病によって幼くして娘の命が絶たれた経験を持つ。第1章「6歳の娘に先立たれて」と第2章「子どもの生まれてきた意味」は、その苦悩を乗り越えるために書かれた文章のように見える。
 著者は体験から、病児と家族を支える「NPO法人スマイルオブキッズ」を創設して、同じ苦悩を抱える人たちと共に歩むようになる。子どもを抱え、病院に通院する際の宿泊所の開設も、その大きな一歩である。
 第3章では「限りある子どもの命と精一杯向き合った家族たち」の姿が伝えられ、第4章では「こどもホスピスをつくる」と、志を同じくする人たちの理解と協力を得ながら、「こどもホスピス」の実現を目指す。本書の中では「死にゆくため」ではなく「一緒に生きるため」の場所と、限りある生を輝かせようと肯定的にホスピスは捉えられている。
 こうした生の営みは、子どもにも、死を看取ることになる家族にも、大きな意味を持つことが分かる。
 短くとも、輝く人生に必要なものが何か、問い掛ける一冊である。
(1870円 新泉社)
(吹)

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