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教師の「あるあるトラブル」初期対応77

13面記事

書評

鈴木 ヒデトシ 著
ノグチ ノブコ イラスト
災いを信頼関係築く機会に転ず

 評者が教員なりたての頃は、「先生、転んで足を擦りむいちゃった」「どれどれ、大丈夫だ。赤チンつけてあげようね」。これで一件落着、であった。しかし、現在はそうはいかない。ではどうすれば? 本書がある。
 学校現場は多くの人が集まっている。安心・安全は最重要課題である。それでも事故やトラブルは後を絶たない。その事実を踏まえ、著者は「トラブルは発生させない」のではなく「必ず起こる」を前提にして「事態を深刻化させず、連鎖させない」ようにすべきだと説く。そのためには、書名に示した「初期対応」が重要になるのだ。
 本書は、日常の学校生活の中で起こり得る児童・同僚・保護者等に関わる77の事例を提示する。それらは「その通りだ」「そんなこともあったな」等、誰もが経験したであろう事例である。しかしその対応は、と問われれば、著者のようではなかった自分に気付く。
 一事例を見開き2ページで示し、しかもイラスト入り、さっと読める。それに、「あなたならどうする」という問い掛けで考えさせ、最後には「心くばりもわすれずに」とくれば、対応には優しさが大切だと教えてくれる。
 本書に示す初期対応に学び、トラブルを乗り越えて、より強い信頼関係が生まれたら、文字通り「災い転じて福」を招くことになる。福に満ちた現場にしていきたいものだ。
(1980円 東洋館出版社)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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