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最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選

14面記事

書評

ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで
菱村 幸彦 著
コロナ対策など現下の課題に対応

 著者の菱村幸彦氏は元文部省初等中等教育局長で、教育法規のスペシャリスト。氏が3年前に上梓した「Q&Aスクール・コンプライアンス111選」を令和2年秋時点の現状に即した内容にリフレッシュしたのが本書である。
 新型コロナウイルス対策やオンライン授業の項も加わった鮮度の良さだが、著者も前書きで述べているように、わずか3年の間に内容改訂の必要性が生じるほど、法令の改正や重要通知の発出が頻発し、教育の現場で新たな事案が発生しているということである。
 例えば「職場におけるパワーハラスメントについて、どのような法的規制がありますか?」という項では、法的ルールや定義が存在していなかった旧版から一転、本書では昨年の労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止法)から書き出され、その要点が簡潔明瞭に解説される。その他、学校への携帯電話の持ち込み、教員の超過勤務に関する規則、給食費滞納者への対応についても修正された。さらに、LGBTや妊産婦に対するハラスメント、健康増進法改正と喫煙に関する項などが増補された。
 全項見開き構成なので、短時間の拾い読みで的確な知識を獲得できる。その一方、120のQ&Aを通覧して思い至るのは、つい最近までわれわれはさまざまな側面で「公正さ」を保障し合ってこなかったという事実である。コンプライアンスを学ぶのは自らを守るためだけではない。ひとえに社会的責任を果たすために学ぶのだ。
(2750円 ぎょうせい)
(由)

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