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ゲーリーシステムの研究 大正期日本教育への導入と帰結

14面記事

書評

出井 善次 著
「知識偏重・画一主義」脱却の試み

 ゲーリーシステムとは、アメリカ新教育が生んだプランの一つである。ミシガン湖畔にあるゲーリー市は、鉄鋼産業の工業都市として20世紀初頭から急激に発展した。流入してきた多くの移民が労働者として働き、急増する子弟の教育が課題となった。
 ゲーリープランは、通常の学校教育とは異なり、小学2年生までを除き、クラスごとの固定教室を持たない。児童は、普通教室と特別教室の両方を行き来して、作業・学習・運動を通じて学んでいくのである。
 ゲーリーシステムは、学校施設を有効に活用する「二部授業」であると同時に、ジョン・デューイの教育思想「為すことによって学ぶ」を体現したものでもあった。
 本書は、大正期に教育関係者から注目されたゲーリーシステムの導入の経緯と3校の事例を検討したものである。中等教育への進学志向の高まりと詰め込み主義で知識偏重の画一的な中等教育への批判。このような状況下で、ゲーリーシステムに対して、新しい教育の可能性を求めたのである。作業・学習・運動の一体化による教育の総合化を目指した淺野綜合中学校、二部授業で中学入学難の克服を試みた東京府立第四中学校、職工養成に特化した大阪府立職工学校。詳細な資料の分析に基づく検討は、現代の教育の在り方に多くの示唆を与えるものだといえるだろう。
(2200円 発行 ブイツーソリューション、発売 星雲社)
(都筑 学・中央大学教授)

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