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OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来

12面記事

書評

白井 俊 著
内と外から見た改革の意味と行方

 OECD生徒の学習到達度調査、いわゆるPISA調査が指し示す学力の在り方が、その是非はともかく、世界の教育潮流を形成する上で大きな影響を与えている。
 発信源の動向を伝える「OECD」がタイトルに入った教育関係の“翻訳もの”も多く刊行されてきた。だが、いま世界の教育では何が課題になり、どう克服しようとしているかの手掛かりにはなるものの、日本はどうあれば、という疑問が残ることは少なくない。
 本書には、そうした「隔靴掻痒」感を覚えなかった。文科省職員である著者自身がOECDで取り組んできたプロジェクトを発信者の立場で語り、日本に戻ってからは受信者、あるいは同行者として関わっているため、プロジェクトの狙いと日本の教育動向との重なりを読めるためだ。
 「2030年」の世界を前提に、その世界観、必要となるコンピテンシー、カリキュラムなどが語られ、終章には「これからの日本の教育を考える」を置く。各章中にある「column」はより日本に引き付けて書かれており、進行する改革を読み解くのに役立つ。
 不透明な未来を切り開く力「エージェンシー」や「意図されたカリキュラム」「実施されたカリキュラム」など、今後の教育政策に反映してほしい新たな知見に触れることができる。お薦めの「OECD」本である。
(3300円 ミネルヴァ書房)
(矢)

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