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インクルーシブな学校をつくる 北欧の研究と実践に学びながら

18面記事

書評

石田 祥代・是永 かな子・眞城 知己 編著
多様な課題への取り組みなど紹介

 障害児教育、北欧のインクルーシブ教育の研究蓄積に加え、日本国内で開催した国際シンポジウムでの北欧各国の研究者らの報告などを基に刊行した。
 本書では、教育におけるインクルージョンを「教育的ニーズの多様性を包含する範囲を拡大するプロセスであり、それをその方向性をもった学校制度の継続的改善と変容の過程に位置づけた状態」と定義。障害以外にも性別や貧困、言語、民族、地理的隔離などの不利な立場や疎外化などを含める国もあり「教育的ニーズの多様性」の意味を考えさせられる。
 また「多様性を包含する範囲を拡大するプロセス」と「学校制度の継続的改善と変容の過程に位置づけた状態」という視点からは、例えば、日本国内の授業に一部取り込まれている固定的な学習スタンダードは、インクルージョンの考え方とは相いれないという。よかれと試みる学習方法、学習環境に変容できる余地がなければ、エクスクルージョン(排除)につながることにも気付かされる。
 歴史的展開などを「インクルージョンと学校」、制度も概説した「北欧の学校が抱える様々な課題とインクルージョン実践」、国内の課題を視野に「学校現場でインクルージョンをどのように実現するか」の3部、全15章で構成。国情の違いでアプローチもさまざまだが、世界の実践から蓄積された知見は日本の参考にできる部分も多い。
(2750円 ミネルヴァ書房)
(矢)

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