日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

気候崩壊 次世代とともに考える

14面記事

書評

岩波ブックレットNo.1047
宇佐美 誠 著
迫る「危機」と回避策、易しく語る

 地球温暖化とか、異常気象という言葉は耳にしたことがあるが、気候危機とか気候崩壊という言葉は本書に出合う前には聞いたことがない。「気候崩壊」というのは、「だんだん悪くなっている地球の気候が、将来には人類にとって非常に危険な状態になる」という意味だと著者は書いている。そんなことは考えたこともなかった私にとって、この100ページ足らずの岩波ブックレットは衝撃的な本であった。未知、無知のままにはしておけない。
 世界の気候科学者は、今の気候変動が自然的要因ではなく人為的原因によるという点で見解が一致しているそうである。人為的原因の最たるものは温室効果ガスの大量排出であり、それへの国際的な取り組みは30年前から始まったのだが、その後も事態は悪化するばかりだと著者は警告している。
 その悪化は人類に何を及ぼすのか。大規模な水不足、その結果が生む食料不足、健康被害、乳幼児の死亡率の高まりや発育不全、それらが招来する経済的悪影響や世界恐慌、環境悪化がもたらす人口移動等々であるという。鳥肌が立つような予言だ。
 では、今から何をすべきか、せねばならないか。それは本書に譲るしかないが、本書は中・高生に向けた2回の特別講義録であり、平明、簡素な叙述で読みやすい。受講後の質疑や若者の感想も併載されていて貴重な問題提起の書と言える重い文献である。
(682円 岩波書店)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

書評

連載