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学校の環境衛生の向上に加湿器を整備

9面記事

企画特集

図書室の天井に整備された「てんまい加湿器」(天井埋め込み式)

東京都北区立田端中学校

乾燥を防ぐ加湿器で感染リスクを下げる
 密閉性の高い学校施設は、1年を通じて室内が乾燥しがちだ。特に空気が乾燥する冬季は暖房によって湿度がさらに低下することで、新型コロナウイルスを始め、さまざまな感染症の要因となるウイルスの活性が持続する時間が長くなり、感染リスクが高くなることが報告されている。そのため、学校の教室等では加湿器を使用して適切な湿度を保ち、環境衛生を維持することが重要となっている。
 こうした中、学校施設の新築・改修では、今や設計段階からエアコンと併せて加湿器を整備することが標準的な仕様となっている。2019年4月に新築8階建の校舎へと移転した北区立田端中学校もそんな一校だ。「文化と人をつくる学校」をコンセプトに建てられた同校は、敷地面積に制約がある中でグラウンドの広さを確保するため高層化しており、プールが8階にあるなど公立の中学校では類を見ない校舎となっている。

1~2階には単独運転できる専用の加湿器を整備
 浦山裕志校長によれば、同校の良好な空気環境を保つ空調設備は2層に分かれており、3~7階の普通教室等には、外の空気を取り入れて風量や湿度を調整する外調機がエアコンと併せて整備されている。
 一方、「1~2階にある職員室・校長室や家庭科室、特別支援教室、図書室、保健室等に18台整備されています」と話すのが、ウエットマスター(株)の「てんまい加湿器」だ。本機はオフィスなど保健空調の主流となっている気化式加湿器の先駆けとなったモデルで、単独運転・室内直接加湿方式を採用しているのが特長。室内の空気を吸い込み、加湿した高湿空気を直接吹き出す方式のため、空調機の冷暖運転や風量変動に左右されない。
 また、加湿制御に必要なヒューミディスタット(湿度調節器)機能を内蔵した仕様も用意しているほか、何よりも天井埋め込み式で美観性を損なわず、学習の邪魔をしない静音性(強運転で40dB)を備えていることが、学校施設での導入を後押ししている。

活動制限の緩和に向けても、心強い味方に
 「てんまい加湿器」は、室内の壁に設置されたリモコンスイッチで操作するが、基本的にはON・OFFと強・弱の操作のみと簡単な仕様になっている。浦山校長も「冬の時期は、毎朝校長室に入ったときにスイッチを入れるのが習慣になっていますね。他の教室も、教職員が臨機応変に稼働させているようです」と語る。
 その上で、以前の学校では教室用にポータブルな加湿器を購入して使ったことがあったが、毎日の水の補充や洗浄が必要な割には効果が乏しかったと振り返り、「そうした意味でも、エアコンなどの空調機に加えて室内の適切な湿度も保ってくれる機器を備えていくことが、これからの学校施設には必要だと思います」と指摘する。
 その言葉通り、職員室のような広いスペースでも湿度は54%と適切に保たれていた。そこからも、調理実習を行う家庭科室や感染対策に気を配る必要のある特別支援教室などに「てんまい加湿器」を整備した意図が見て取れる。
 「このような恵まれた環境のおかげかは分かりませんが、新型コロナの感染がピークを迎えた時期でも、本校の中でクラスターが発生した事例は一度もありません」と手応えを口にする。学校の活動制限の緩和という次のフェーズに向けても、こうした同校の環境衛生を保つ仕組みが心強い味方になるはずだ。


図書室の天井に整備された「てんまい加湿器」(天井埋め込み式)


加湿器のリモコンスイッチ

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