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HSPの心理学 科学的根拠(エビデンス)から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」

12面記事

書評

飯村 周平 著
研究知見生かし「環境感受性」解説

 「HSP」(Highly Sensitive Person)の著者の定義は「環境感受性の高い人」であり「感受性が高いがゆえに、良い環境と悪い環境から『よくもわるくも』影響を受けやすい人」である。
 「環境感受性」の研究は1990年代、発達心理学者(ジェイ・ベルスキー)、臨床心理学者(エレイン・アーロン)、進化発達心理学者(ブルース・エリス)らの研究から始まった。
 日本国内では「HSP」を感受性が高いために「生きづらさ」と結び付けがち。研究知見のない解釈も存在するため「HSPにまつわる誤解をひも解く」(第1章)から説き起こし「研究にもとづくHSPの考え方」(第2章)や「HSPにまつわる研究知見」(第4章)などによって「HSP」理解を促進する。
 例えば、感受性の高い・低い・中程度のグループを育成環境に気を使う「ラン」(高い)、比較的環境を問わずに育つ「タンポポ」(低い)、ランほど場所を選ばす、タンポポよりは育て方に気を付ける「チューリップ」(中程度)と花に例える。どの花も美しく「自分自身の個性を正しく見つめ、自分に合った環境に身を置くことに注意を向けるようにすることこそが大切」と平易に説明。感受性の高い子ども(HSC)も学校環境が良好であれば、良好な精神状態を示すという研究知見も紹介する。
 「科学的根拠」を背景に語る本書は、「HSP」全般を理解したい人に薦めたい。
(2200円 金子書房)
(矢)

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