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修学旅行の充実・発展を支える新幹線

9面記事

企画特集

出発式では生徒から駅員に花束が渡された

修学旅行専用列車で安心・安全な移動を

 わが国の学校の伝統行事である修学旅行が発展する中で、移動手段として大きな役割を担ってきたのが新幹線だ。今や北海道から九州圏まで路線が延長された新幹線は、修学旅行が思い出づくりから学びの旅へとその姿を変えた現代においても、快適で安全な旅程を計画できる交通サービスとして変わらぬ人気を誇っている。今回は、修学旅行への新幹線利用の変遷をたどってみた。

修学旅行で欠かせない輸送手段に
 東日本旅客鉄道(株)(以下、JR東日本)によると、「修学旅行専用列車」による計画輸送は、1959年(昭和34年)に運転が開始された「ひので」「きぼう」号が始まりで、間もなく70年になる。「時代の変化とともに鉄道以外にもフェリーや航空機など、さまざまな輸送形態が利用されるようになりましたが、その始まりは鉄道からといっても過言ではないのかもしれません」と同社担当者は話す。
 1964年(昭和39年)からは、公立学校の修学旅行には時間制限がある関係から、移動時間を大幅に短縮できる新幹線による修学旅行が開始され、修学旅行専用列車の役目を継承していくことになる。東海道・山陽新幹線が全線開通(東京~博多間)し、新幹線利用による修学旅行の充実・発展の基盤が確立すると、京都市への修学旅行者数は毎年100万人超えを記録するほど増加の一途をたどり、近畿地区中学校の中国・九州旅行も激増した。
 その後、現在に至るまで新幹線は修学旅行で欠かせない輸送手段となっているが、修学旅行専用列車を実施する上で気を付けている点について同社担当者は、「列車の合間を縫って専用列車を設定するため制約が多いですが、旅行行程に影響を与えないよう、ご希望に沿った列車設定を心掛けています」と答える。また、団体移動に配慮して、通常よりも長い停車時間を確保する工夫も取り入れているという。
 その上で、「近年、新型コロナウイルスの影響等により、鉄道のご利用状況は急激に変化しておりますが、JR東日本として引き続き安全・安心にご利用いただける輸送サービスを提供し、修学旅行生の皆さまの学校外の思い出づくりの一端としてお手伝いさせていただければ幸いです」と抱負を語る。
 なお、JRを利用した修学旅行は、学生団体の割引が適用されることも大きな魅力。運賃の割引率は、中学生以上の団体で50%、小学生以下の団体で小児運賃の30%、教職員・付添人が30%だ。

東京駅で「出発式」実施、コロナ前の8割に回復
 5月に東京駅では、茨城・栃木・千葉の中学生たちが修学旅行専用の東海道新幹線で京都・奈良などへ向かう「出発式」が行われた。新型コロナウイルスの影響で修学旅行の開催が不安視された時期もあったが、代表して挨拶した生徒は「私たちの学年はコロナ禍であり、さまざまな行事が中止となっていました。今回無事に実施され、しかも初めてほぼ規制のないものとなることに、大きな喜びと感謝を感じずにはいられません」「修学旅行の3日間は感謝の気持ちを忘れず、今まで取り組んできたことを活かしたい」などと話した。
 JR東海によると、6月までにコロナ前の8割程度、約77万人が東海道新幹線で修学旅行に行く予定とのこと。日常という切符を取り戻した生徒たちを乗せて走り出した新幹線。今後も修学旅行の輸送手段として、思い出づくりだけでなく、学びの旅としての側面も加わり、修学旅行がその姿を変えた現代においても新幹線は、一役を担っていくことを期待したい。


修学旅行生を乗せた新幹線を見送る駅長

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