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子どもの遊びを考える 「いいこと思いついた!」から見えてくること

14面記事

書評

佐伯 胖 編著
「自発的活動」の見方を問い直す

 「遊び」とは子どもにとって必要不可欠であり、その重要性について異論を唱えることは難しい。さらに、「遊びとは子どもが自発的にすること」であり、誰かに教えられたり強要されたりすることではないとされる。
 しかし、「遊びは自発的な活動である」と本当に言い切れるのか。それは、子どもが遊びの中で「あ、いいこと思いついた」と言って、それを実行したくなる瞬間があるからだ。「いいこと思いつく」ことは「自ら進んで行うこと」はできない。そうなると、「遊びは自発的な活動である」という見方だけでなく、別の見方でも捉える必要があるのではないか。
 本書前半は、一人の学生が自身の修士論文を「中動態」という概念を基に、「自発的な活動としての遊び」を批判的に検討し「遊びとは何か」を問い直す作業をしている。そして後半は、前半の考察を踏まえ4人の論者が「いいこと思いついた」について、持論を展開する。編著者の佐伯氏はこの学生の指導教官であり、この論文が「おもしろい」ので、この論文を巡って「多様な専門領域からの補足的論考をまとめて一冊にした」と言っている。研究者以外の読者にとっては若干難解な点もあるが、「いいこと思いついた」の世界に気付いた学生のエピソードや「森のようちえん」の実践事例から、実践者にとっても子どもの遊びを再考する契機となる一冊である。
(2640円 北大路書房)
〔重森 栄理・広島県教育委員会乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与〕

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