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教員不足クライシス 非正規教員のリアルからせまる教育の危機

18面記事

書評

山崎 洋介・杉浦 孝雄 原北 祥悟・教育科学研究会 編
根源的で深刻な問題を鋭く突く

 何ともセンセーショナルなタイトルの本である。そして、非常に恐ろしい本でもある。なぜならば、各種の統計資料や現場で働く教員の生の声に基づきながら、現在の学校教育に内在する根源的で深刻な問題状況を多面的に明らかにしているからである。
 公立小・中学校における教員不足については、20年ほど前から取り沙汰されてきたが、その全容ははっきりと分からないままだった。学校教育を所管する文科省が、教員定数に対する実教員数を調査したのは2021年度。その結果、新年度が始まったばかりの4月の段階で、既に必要な教員数を満たしていない状況であることが白日の下になった。
 問題はそれだけではない。地方分権化の推進に伴う教員給与の総額裁量制(2004年度)や義務教育費国庫負担金の2分の1から3分の1への引き下げ(2006年度)を背景にして、地方自治体は正規教員の採用を抑制する代わりに、各種の非正規教員を増やしてきた。一例を挙げれば、法律上、「臨時」的な措置と規定されている臨時的任用教員を恒常的に配置するような政策を取ってきたのである。
 身分も収入も不安定な非正規教員が年々増加する中での学校教育は、教育労働者の人権や人格をないがしろにするだけでなく、子どもの学習や成長・発達の権利保障を危うくする。本書は、このような問題点を鋭く突いている。
(1870円 旬報社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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