これからの道徳教育はどうあるべきか
13面記事
浅見 哲也 著
対話を深める「タメ」の重要性
道徳教育が「特別の教科」となって8年がたつ。本書は、文科省教科調査官を経て、現在は十文字学園女子大学で教壇に立つ浅見哲也氏が、道徳教育の現在地を捉え、次代への指針を示した一冊である。
第1章では、令和3年度の「道徳教育実施状況調査」の結果に基づき、現状を分析する。教科書や指導書への依存、評価に対する教師の不安といった課題を描き出し、著者は「考え、議論する道徳」への質的転換・実装を図るべく、第2章以降、道徳教育のありようを問い直してゆく。トピックは多岐にわたるが、例えば発問の構成を「人間理解→他者理解→価値理解」の3段階に整理しつつ、「読み取り道徳」や「押し付け道徳」を排した、子ども主体の授業像を描き出している。
特に、学習過程に「溜(タメ)」を創出することの重要性は見逃せない。意図的に時間をかけ、対話を深めるための「タメ」をどこでどうつくるか。第4章では、『はしの上のおおかみ』など三つの教材を取り上げ、指導のポイントが丁寧に示される。取り上げられる事例はいずれも小学校の教材だが、その授業づくりの視点は中学校でも十分に通用する普遍性を備えている。最終章において、自作教材を開発することの意義について触れられている点も重要だ。次期学習指導要領の改訂を見据え、道徳教育の今後の方向性を把握する上で今、読んでおきたい一冊である。
(2310円 東洋館出版社)
(井藤 元・東京理科大学教授)

