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「気になる子」が変わるとき

14面記事

書評

困難をかかえる子どもの発達と保育
木下 孝司 著
事実を捉え共有する大切さ

 保育園で、クラスの部屋からホールへ行く順番が1番でなかったとき、突然パニックになる3歳児。給食の最中に、スプーンや食器を頻繁に投げ付けるダウン症の3歳児。そのような子どもの気持ちに寄り添いながら、「困った行動」が生じる理由を探っていく鍵は、身近なところにある。
 本書で強調されているのは、事実や実態から出発することである。「困った行動」が起きやすいのは、どんなときなのか。その前後の様子をしっかりと捉えること。それが大事なのだ。
 他方で、そうした子どもも、「困った行動」ばかりしているわけではない。好きな遊びに熱中した後には、スムーズに行動することもある。保育者がそうした事実や実態を一つ一つつかんで、皆で共有していくこと。それが大事なのだ。こんなふうに実践的な子ども理解が深まると、「気になる子」の笑顔がいとおしくなっていく。そうして「気になる子」が変わっていく。
 「必要とされる自分」「誇らしい自分」「今、ここにいる自分」を感じられるようになることで、「気になる子」は発達していく。これも、本書で強調されている大事な視点である。このことは、単に子どもだけに当てはまるものではない。子どもと一緒に歩んでいく保育者も保護者もまた、三つの自分を感じられるとき、大きく変わっていくのだ。保育や育児に悩んでいる大人たちに本書を強く薦めたい。
(2160円 かもがわ出版)
(都筑 学・中央大学教授)

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