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SDGsとまちづくり 持続可能な地域と学びづくり

14面記事

書評

田中 治彦・枝廣 淳子・久保田 崇 編著
中学校の実践事例など紹介

 教師の視野は依然として狭い。それは学校と自宅の往復が日常であるからかもしれない。だからこそ、自ら異分野へと関わらないと「井の中の教師」となってしまう。本書はSDGsという必然性と、街の中に存在する学校の互恵関係にも多方面からアプローチをしている。SDGsのスローガンの「誰一人取り残さない」は教育にあっては当然のことであるが、現実はできていない。
 本書は、前冊に続く3冊目の解説書で「住み続けられるまちづくり」をテーマとしている。年々増える大災害との関連の中でタイムリーな「持続可能な地域と学びづくり」の視点で探究し、驚くほどの内容をコンパクトにまとめ、中でも見落としがちな若者、高齢者、在住外国人にも焦点を当て、読者に実践的な活動を促す域にまで達している。グローバル化において足元から考えさせる大学講義にも適した構成でもある。明らかに同類の書と一線を画した秀書であり、特に「子どもの居場所があるまちづくり」と「まちづくり教育の実践」の二つの章は、学校現場からすると納得の内容である。中でも埼玉県上尾市立東中学校の「まちづくり教育」の実践は、どの学校でも取り組める要素が散りばめられている。
 さらに執筆者の構成が多方面からなり、適材適所に充てられ、半数が女性であることも分かりやすさを強調している。
(3300円 学文社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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